アメリカの研究者にとってのテニュア
アメリカの大学や研究所に在籍する研究者は、いろいろな立場の人がいます。
かつての私のように、招聘されて他国から一時的に共同研究のために来ている研究者もいますし、
有期雇用の研究者、テニュア(tenure)を持っている研究者とその内実はさまざまです。
テニュアとはなにか
これは、無期雇用(終身雇用)の資格(権利)に相当するものです。
テニュアを持っている研究者は、定年や期限がなく、自分の判断で在籍を続けることができます。
所属している組織そのものが消滅した場合は別でしょうが、基本的に非常に安定した立場です。
そもそも雇用開始の時点で、tenure trackなのかそうでないのかは決まっています。
つまり
テニュアコースでスタートする人と、
テニュアとは関係なく所定の雇用関係でスタートする人がいるわけです。
しかし、テニュアトラックで勤務を開始したからといって、必ずテニュアがとれるとは限りません。
だいたい5年くらい経過して時点で、その人にテニュアを与えるかどうかの審査に入り、
これにパスすれば晴れてテニュアを持つ研究者となります。
他方、審査で否定された場合は、おおむね退職することになるようです。
テニュアの審査で落選した研究者は、相当ショックを受けると思われます。
実際、比較的周辺で、テニュア獲得に失敗した例を見たことがありますが、
かなりの衝撃のように見受けました。
それはそうですよね。
終身雇用のはずが、失職となるのですから。
テニュアを持っている人々
知人でテニュアを持っていた研究者は、意外なことにわりに早い段階で退職していました。
だいたい日本の大学の定年くらいの年齢で、自発的に辞めたんですね。
私などは、もったいない、もう少しやればいいのにと思ったのですが、
各自いろいろな人生設計がありますから。
さて、審査に受かるかどうかもハラハラしますが、
そもそもテニュアトラックの仕事を得ること自体も、競争が激しいようです。
grant, grant, grant!
テニュア審査がたいへんなのはもちろんですが、
それ以外にほぼすべての研究者が苦労しているのがグラント(研究助成金)の獲得です。
この助成金がとれるかどうかは、本当に深刻な問題のようで、
傍で見ていてもドキドキするような感じでした。
ソフトマネーとハードマネー
研究者の中には、大学等勤務している組織の資金で雇用されている人と、
grant(外部から獲得してくる研究助成金)等を資金として雇用されている人がいます。
前者をハードマネーによる雇用、後者をソフトマネーによる雇用と呼ぶことが多いようです。
ソフトマネーを財源に雇用されている人々は、
次期の助成金がとれないと、場合によっては職場に残れなくなります。
そこが実に厳しいところで、実際にいなくなった研究者を何人も見ました。
研究そのものにかかる費用だけではなく、
研究に携わる人々の人件費の確保という意味も含めて、
grant獲得はたいへん重要な課題なのです。
ソフトマネー・ハードマネーについてはこちらの記事もご覧いただければと思います。
以上は私の知る範囲の限定的な例です
身近にいるいわば部外者として、上記の様子を見ていると、本当にたいへんだなあと心から思うのです。
もちろん私の見聞きしたことは、限定的ですから、また別の展開もあるのかもしれませんが、
一つの例として紹介をさせていただきました。
アメリカの大学には外国人も多数在籍していて、
英語がネイティブでなくても大健闘しています。
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