ソフトマネーによる雇用
アメリカの大学や研究所の場合、ソフトマネーで雇用されている研究者がかなりの人数います。
ソフトマネーとは、外部からの資金です。
競争的資金(grant)と呼ばれ、獲得するためには、
PI と呼ばれる研究室の責任者(詳細は後述します)を中心に、グラント獲得のための分厚い研究計画書(今はオンラインですから、分厚いというのも変ですが)を書き、
研究室の実績も上げて、非常に苦労しています
簡単にすっと獲れるわけでは、まったくありません。
私が客員研究員としてしばらく在籍した研究所では、応募結果がだいたい秋ごろに出始めるため、獲得した人(グループ)を讃えるサーキュレーションが時々回覧されます。
○○さんのグループ、○○ドルの研究資金獲得!
のような内容です。
同じ研究所から複数のグループが応募していることもあって、落選組はがっかりだとは思いますが、こればかりはしょうがありません。
次回がんばろうということです。
本当にみんな、grantのことをいつも考えて、一生懸命努力しています。
ここで問題になるのが、ソフトマネーで雇用されている人々の行方です。
ハードマネーで雇用されている人とは異なる立場
おおまかな言い方をすれば、ハードマネーで雇用されている人というのは、大学教員ならその大学の既定の経費(資金)によって雇用されている人々です。
この場合、雇用のベースは固いです。
テニュアを持っている教員はたいていの場合、ハードマネーで雇用されています。
テニュアについては、こちらの記事をご参照ください。
他方、ノンテニュアの研究者や他の職員はソフトマネー(競争的な外部からの資金)で雇用されているケースが多くなっています。
つまり同じ大学や研究所に勤務していても、給料の出所が異なるわけです。
ソフトマネーで雇用されている人々の雇用ベースは、不安定なところがあります。
誰が外部資金を獲得するのか
自分の研究室をもっている研究者を、PI(principal investigator)と呼びます。
なにも教授に限られるわけではなく、日本で言えば助教クラスの研究者も独立して研究室を主宰している人はいました。
こうした事情は、大学や研究所によって多少違うかもしれません。
PIは、外部資金に応募し、外部資金を獲得することで自分の研究室を維持発展させます。
この研究室に雇用されている研究員は、多くの場合ソフトマネー(つまりPIが持ってきた外部資金)によって雇用されています。
したがって、PIが資金不足になった場合、その研究室にいる人々の雇用はきわめて不安定になります。
実際、私がいた短い間にも、資金不足の研究室が実質閉じられて、いなくなってしまった研究員を何人も見ました。
このあたりは本当にシビアです。