一研究者として思うこと
日本人女性でノーベル賞受賞者はまだいませんが、中国では薬草の研究者が受賞しています
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中国では、女性医学者・医薬品化学者 ト・ユウユウ氏が、
2015年にノーベル生理学・医学賞を抗マラリア新薬を作り出したことにより受賞しています。
この女性研究者の来し方が、非常にユニークなので私はたいへん感動し、また興味ももちまました。
2015年のこの時、日本の大村智博士が、ノーベル生理学・医学賞を受賞されましたので、
授賞式の様子をテレビで見ていた日本人は多かったと思います。
ノーベル賞授賞式の様子が、youtubeに収められていますので、リンクをはっておきますね。
そして、この授賞式の映像を経て、我々は
中国の女性科学者が、中国の伝統として引き継がれてきた薬草の研究をさらに高めることによって、
抗マラリア新薬を生み出し、この日同時受賞されたことを知りました。
私の印象では、発展途上国出身あるいは発展途上国時代に青年期を過ごした科学者で、
ノーベル賞を受けるような世界の超トップクラスの人材は、
その多くがアメリカかヨーロッパで教育を受けたり、あるいは研究したりしている傾向が強
いように思います。
しかし、ト・ユウユウ氏は中国の国外に出て研究したことはなく、
中国本土で教育を受け、かつ研究を続けたということです。
中国に対してはいろいろな感想をもつ方も多いでしょうが、
とにかく私はこの研究者のユニークなプロフィールにすっかり感心してしまったのです。
「薬草」ですよ。
「薬草の研究」でノーベル賞です。
関心をもたずにいられない気持ちでした。
「ト・ユウユウ」という本が出版されました
2019年6月に「ト・ユウユウ」という日本語の本が、『ト・ユウユウ(注:ト・ユウユウは漢字で表記されていますが、打ち出せないためカタカナで失礼します)』編集委員会によって刊行されたのですが、
私はそれをしばらく知らず、2020年10月にアマゾンで取り寄せて読みました。
飾り気のない本で、淡々と偉業に至るまでの人生が描かれています。
1930年に中国浙江省で生まれ、北京大学医学部薬学科卒。
1969年から抗マラリア生薬の研究を始め、
1972年にヨモギの一種クソニンジンからアルテミシニンを開発したとのことです。
いろいろと大きな変動があったであろう中国で、ひたすら薬学・薬草の研究をされていたと思うとその一途さに感銘します。
この本は、大村智博士推薦の書であり、
「ト・ユウユウ氏が歩んできた道は、研究者としての根気と熱意、そして何よりも常に変わら
ぬ真理の発見への執念そのものだ」
(注:ト・ユウユウは漢字で表記されていますが、打ち出せないためカタカナで失礼します)
という大村博士の文が添えられています。
本当にそのとおりだと思うのです。
これは、国籍や人種を超えて、研究の根幹にある真実です。
研究を続けるということは、熱意だけでなく根気も必要
このような立派な研究には及びもつかないですが、
私も一研究者のはしくれとして、根気は本当に大切だと思います。
日々の暮らしの中でも気分よく物事が進んでいる時は熱意が維持できても、
いったん行き詰ると嫌になってしまいがちです。
張り切って研究しようという気持ちが、なにかのきっかけで揺らいでしまったり、
なえてしまうことがあるのです。
また、怠け心もいつも私の心の中に巣食っています。
そういえば、洋の東西は異なりますが、『GRIT やり抜く力』アンジェラ・ダックワース著