同僚レベルでの話
論文とくに博士論文のどこから着手したらいいか分からない、
目途が立たないうちにどんどん時間が過ぎていく
という声を博士課程の院生から時々聞くことがあります。
アカデミックな指導は指導教授がなさっているので、
学術的なアドバイスを求めての声ではなく、
なんとなくやる気が出ないといった感じの、いわば友達間ならではの話なんですね。
人に聞いてもらうと、ドヨンとした気持ちが少しは晴れたりします。
私の部外者としての感想
客員の研究者として、私が思うことを少しまとめてみたいと思います。
企業経営者である私は、ビジネスが本業で、
他方、博士号を持つ客員研究者として研究活動を行い、
兼任講師として、授業も担当しているという立場です。
全身アカデミアに入っているわけではないので、事情が少し分かる一般人としての感想をシェアしてみたいと思います。
(1)スタートが切れないという声
まず、A4一枚を書くことから始まるわけですが、
いろいろな思いが交錯して、その最初の一歩がなかなか踏み出せない。
書いては反故にし、書いては反故にするという状態。
まず書いて、ゼミで発表することから始めるといいのでは。
その際、煉瓦を積み重ねるように、
一つ一つの発表を大事にしたいですね。
(2)先行研究を読む時間があまりに長い
同じ範疇の先輩研究者の方々の研究論文をしっかり読んでから、
自分の研究の新しさを打ち出す、というのが道筋です。
ですから、先行研究をじっくり読みこむことは、必須なのですが、
ずっと読んでいては、自分の研究が進みませんので、書きだすことが必要です。
(3)テーマが大きすぎる
私が知っている限られた範囲の経験で恐縮ですが、
文系の場合、自分で自分の興味のあるテーマを選び、設定していると思います。
もちろん指導教授と相談の上でですが。
このテーマの設定によって、論文の書きやすさはずいぶん異なります。
あまりにも全般的で広いテーマは、やはり書きにくい。
具体的で、一定の範囲のテーマは取り組みやすいです。
書きやすいからそのテーマを選ぶというのではなく、
自分の興味のあるテーマを、論文が書ける角度から捉えることは大切なのではないでしょうか。
(4)研究の方法が、決まらない、はっきりしない
エッセイや文学作品とは異なり、論文の場合、どういう方法で問題を検証していくか、
methodology(methods)をしっかり立てなくてはなりません。
たとえば、Aというタイプの職場とBというタイプの職場では、
どちらが作業効率が上がるかという比較をする場合、その比較方法を
最初の段階で具体的にかつ充分に検討する必要があります。
先にここを考えずに出発すると、
途中の段階で進まなくなり動けなくなるという状態が発生する可能性があります。
たとえば、取材を申し入れたが、断られることが多く、進まない。
アンケートの回答率が10%程度だ。
など、です。
指導教授と相談しながら、手直ししていくことが大切
うまくいかない部分を、違う角度からも再度検討して、
常に微調整しながら進むことが大事だと思います。
自分一人でずっと考えていると視野が狭くなっていることもありますので、
先生はもちろん、ゼミ仲間からも論評してもらうと
新しい視点からのgood ideaに出会うこともあります。